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近年、スポーツ現場において、試合のリカバリー中に高酸素を吸入する光景が時折見られる。このような疲労回復に対する高酸素吸入の有効性について検討されているが、現在もどのような条件で効果的なのか明確にされていない。本研究の目的は、最大努力で行う間欠的運動における発揮パワーの低下が、回復期に吸入する異なる濃度の酸素によって影響を受けるかについて検討することとした。

 被験者は健康な学生10名とした。自転車エルゴメーターを用い、ウォーミングアップの後6秒間の最大運動と30秒間の回復を1セットとして10セットの間欠的運動を行い、10セット終了後に6分間の回復期をとった後、再度5セットの間欠的運動を課した。6秒間の運動中は正常酸素を吸入させ、30秒間と6分間の各回復期には正常酸素、低酸素、高酸素のいずれかの濃度の酸素を吸入させた。正常酸素条件で一通り実験を行い、その後日を改め正常酸素、低酸素、高酸素条件の3つの条件を設定し、3日に分け無作為に実施した。運動パフォーマンスの評価には、ピークパワー、平均パワー、総仕事量を用いた。セット数及び酸素条件の二元配置の繰り返し測定の分散分析により主効果及び交互作用の有無を検定し、交互作用が認められた場合、ボンフェローニ法により、差の検定を行った。

 結果は、平均パワー及び総仕事量におけるセット数に主効果が認められ、平均パワー及び総仕事量はセット数を重ねるごとに低下した。更に平均パワー及び総仕事量におけるセット数×酸素条件の交互作用が認められ、その後の検定により平均パワー及び総仕事量は15セット目で低酸素条件は正常酸素条件と高酸素条件と比較して低値を示した。一方、高酸素条件は正常酸素条件と比較して、統計的な差は認められなかった。

本研究において、リカバリー中に高酸素を吸入することにより回復が促進されるかどうか検討した結果、本研究の実験設定では、リカバリー中の高酸素吸入は短時間の全力運動のパフォーマンスの回復を促進することはなかった。一方、低酸素条件でパフォーマンスの低下が認められたのは、筋への酸素供給が低下することによるクレアチンリン酸レベルの回復の遅れや乳酸の蓄積の影響と考えられる。

以上のことから、間欠的運動に見られるパフォーマンスの低下を最小限にするため、また、セット毎に疲労を回復させるには、リカバリー中に酸素を筋へ供給することの重要性が低酸素条件の結果から示唆されるが、本研究における設定内では高酸素を吸入しても疲労回復を促進できないことが高酸素条件の結果から明らかとなった。

高酸素.png
間欠的運動における回復期の酸素濃度がパフォーマンスに及ぼす影響.png
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